【7期生以降】J-OSLER 120症例の進め方と疾患群の選び方
2024年度開始の7期生から適用されたJ-OSLER新制度(120症例)を徹底解説。領域別最低症例数の一覧、56疾患群の効率的な埋め方、3年間のスケジュールまで。旧160症例との違いも比較。
「症例数が120に減ったって聞いたけど、むしろ大変になってない?」「領域別の最低数って何?」
2024年度から内科専攻医になった7期生以降は、症例登録の修了要件が160から120に変更されました。しかし単純に楽になったわけではなく、各領域に最低症例数が義務化 されるという大きな変更が加わっています。この記事では公式の整備基準改定第2版をもとに、120症例を効率的に進める戦略を解説します。
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160症例から120症例へ|何が変わったのか
2024年10月1日に公表された内科領域 専門研修プログラム整備基準 改定第2版により、専攻医7期生(2024年度に専門研修を開始した方)以降の症例登録数が160から120に変更されました。
改定のポイントを整理すると、症例の「量」よりも「質とバランス」を重視する方針転換です。総数は40症例減りましたが、その代わりに各領域で最低限クリアすべき症例数が新たに設定されました。
変更前(1〜6期生)は56疾患群を満たしたあと、残りの100症例以上を自由に埋められました。消化器内科志望ならポリペク入院を大量に登録する、呼吸器内科志望なら肺炎症例を積み上げるという戦略が可能だったのです。
変更後(7期生以降)は領域別の最低症例数が合計100症例分に設定されたため、自由に使える枠は実質20症例しかありません。サブスペシャルティ領域に偏った登録では修了要件を満たせなくなりました。
なお、7期生・8期生(2024年度・2025年度に研修を開始した方)に限り、移行措置として旧制度の160症例と新制度の120症例のどちらかを選択できます。9期生以降は120症例一本化です。
領域別の最低症例数|全13領域を一覧で確認
新制度で最も重要なのが、領域ごとに設定された最低症例数です。整備基準改定第2版に記載された一覧を図にまとめました。
特に注意すべきは10症例以上が求められる領域 です。消化器、循環器、代謝、腎臓、呼吸器、神経、救急の7領域が該当します。自分のサブスペシャルティ以外の領域でこの数を確保するのは容易ではなく、初期研修中の症例や1年目のローテーション期間にどれだけ確保できるかが鍵になります。
一方、内分泌、血液、アレルギー、膠原病は3症例以上で済みます。ただし、これらの領域は「経験しにくい疾患」が含まれやすい点に注意しましょう。アレルギーの症例は内科志望の専攻医全員が十分に経験できるとは限りません。
56疾患群の要件は旧制度から変更されていません。70ある疾患群のうち56以上を網羅する必要があります。各疾患群の具体的な内容と領域別の分類はJ-OSLER疾患群一覧表で確認できます。疾患群の選び方については29症例の選び方|疾患群バランスと書きやすい症例の見つけ方で詳しく解説しています。
120症例を効率的に進める5つの戦略
戦略1:初期研修の症例を最大限活用する
7期生以降は、初期研修(またはプログラム外の内科研修)中の症例を最大60症例 まで登録できます(旧制度は80症例)。初期研修中に経験した内科系の症例は、J-OSLERの登録対象となる条件を満たしていれば半数を賄える計算です。
病歴要約 作成の手引き(2023年10月版)によると、初期研修中の症例を登録するには3つの条件すべてを満たす必要があります。内科系疾患の成人症例(15歳以上)であること、主担当医として担当し内科指導医から指導を受けていたこと、所属する内科専門研修プログラムが「内科専門研修相当の症例」と認めることです。3条件の詳細や登録時の注意点は初期研修中の症例の条件と登録方法で解説しています。
特に剖検症例や珍しい疾患群の症例は専攻医になってからでは経験しにくいため、研修医時代のデータを確保しておくことが重要です。カルテの情報やサマリーを保管しておけば、専攻医になってから登録できます。
戦略2:1年目のローテーションで不足領域を埋める
多くのプログラムでは専攻医1年目に他科ローテーションを行います。この期間こそ、自分のサブスペシャルティ以外の領域 を集中的に埋めるチャンスです。
たとえば消化器内科志望なら、1年目のうちに循環器、呼吸器、神経、腎臓、血液などのローテーション先で意識的に症例を登録しましょう。2年目以降は自分の専門領域に配属されることが多く、他領域の症例を経験する機会が一気に減ります。
ローテーション先で疾患群を意識しながら症例を選ぶコツはJ-OSLER症例登録の書き方完全ガイドを参照してください。
戦略3:疾患群のダブりに注意する
120症例のうち56疾患群を網羅する必要がありますが、同じ疾患群の症例を何件登録しても疾患群のカウントは1 です。たとえば食道癌と胃癌はどちらも「消化器1(食道胃十二指腸の腫瘍性疾患)」に該当するため、2件登録しても疾患群は1つしか増えません。
自由枠が20症例しかない新制度では、意図しない疾患群の重複は致命的です。登録前に研修手帳で疾患群番号を確認し、なるべく異なる疾患群の症例を選ぶ癖をつけましょう。J-OSLERの「研修実績→モニタリング」画面で現在の充足状況を確認できます(ただし指導医の承認済み症例のみ表示されます)。
iworのダッシュボードでは、56疾患群のうちどれが未達成かを視覚的に確認できます。疾患群カバー率が一目でわかるため、次にどの領域の症例を登録すべきかの判断に役立ちます。
戦略4:外来症例と外科紹介・剖検症例を計画的に確保する
外来症例は全体の1割、つまり最大12症例(旧制度は16症例)まで登録可能です。入院症例は108症例以上が必要になります。
外科紹介症例(2編)と剖検症例(1編)は病歴要約の提出要件でもあるため、早い段階から確保を意識すべきです。特に剖検症例は施設によっては年間の件数自体が少ないため、プログラム統括責任者に相談し、剖検がある場合は呼んでもらう体制を作ることを推奨します。
なお、病歴要約 作成の手引きによると、外科紹介症例と剖検症例に限り、他の病歴要約と疾患群の重複が認められています。これは疾患群のやりくりにおいて地味に重要なルールです。
戦略5:モニタリングを月1回は確認する
J-OSLERのモニタリング機能は、承認済み症例の集計状況を確認できる唯一の公式ツールです。月に1回はログインして、以下のポイントをチェックしましょう。
確認すべきことは3つです。各領域の最低症例数に対する進捗、56疾患群のうち未登録の疾患群がどれだけ残っているか、そして指導医の承認待ちになっている症例がないかです。
承認待ちの症例は進捗にカウントされないため、指導医への承認依頼を溜め込まないことも重要です。承認待ちの症例は進捗にカウントされないため、指導医への承認依頼を溜め込まないことも重要です。
3年間のスケジュール|120症例+29病歴要約
120症例と29病歴要約を3年間で完了させるための理想的なスケジュールを示します。
特に7期生以降で注意すべき点があります。COVID-19の特別措置が適用されないため、「修了見込み」での内科専門医試験の受験ができません。1〜6期生は症例登録が完全に終わっていなくても試験を受けられる猶予がありましたが、7期生以降はすべての修了要件を満たしてからでないと受験資格が得られません。
これは具体的に何を意味するかというと、3年目の秋頃までにすべての病歴要約が二次評価でAcceptされ、症例登録も全数完了している必要があるということです。3年目に入ってから慌てるのではなく、2年目末の時点で症例登録はほぼ完了、病歴要約も29編の下書きが揃っている状態を目指しましょう。
J-OSLERの全体像と修了要件の詳細はJ-OSLERとは?とJ-OSLER修了要件を完全解説で解説しています。
160症例と120症例のどちらを選ぶべきか(7期生・8期生向け)
7期生と8期生は移行措置として160症例か120症例かを選択できます。それぞれのメリット・デメリットを整理します。
120症例を選ぶべきケース :他科ローテーションが十分にあり、各領域で最低症例数を確保できる見込みがある場合です。総数が40少ないため、登録作業の負担は確実に軽くなります。多くの専攻医にとってはこちらが有利でしょう。
160症例を選ぶべきケース :サブスペシャルティ領域の症例を大量に登録してサブスペJ-OSLERでも活用したい場合や、すでに旧制度の想定で80症例以上の初期研修症例を登録済みの場合です。領域別最低数が設定されないため、56疾患群さえ埋まれば残りは自由に登録できます。
判断の基準はシンプルです。「各領域10症例以上を無理なく確保できるか」を考えてみてください。他科ローテーションが1〜2ヶ月しかない領域がある場合、初期研修中の症例でカバーできるかを計算しましょう。不安が残るなら160症例のほうが柔軟に対応できる可能性があります。
よくある質問(FAQ)
120症例に減ったのに、なぜ大変と言われるのですか?
総症例数は減りましたが、各領域に最低症例数が義務化されたことで自由度が大幅に下がりました。旧制度では56疾患群を埋めた後の約100症例を好きな領域で登録できましたが、新制度では自由枠が20症例しかありません。特にサブスペシャルティ領域の症例を重点的に集めたい専攻医にとっては、むしろ制約が増えた側面があります。
初期研修の症例登録上限が80→60に減ったのは痛くない?
確かに上限は減りましたが、総数に対する割合は50%で変わっていません(旧:80/160、新:60/120)。初期研修中に60症例以上の内科症例を主担当医として経験している方は多くないため、実質的な影響は限定的です。ただし、研修医時代に積極的に症例データを保管していた方にとっては上限が制約になるケースもあります。
自己省察はどのくらい書けばいいですか?
整備基準改定第2版には「自己省察として学びがあったことを短く1〜2行程度の記載であったとしても、プログラムがそれを承認すれば問題はない」と明記されています。症例登録の段階では完璧な文章を目指す必要はなく、スピードを重視して1件でも多くの症例を登録することが優先です。
外来症例の上限12症例はどう使うべきですか?
外来症例は入院症例では経験しにくい慢性疾患(高血圧、脂質異常症、甲状腺疾患など)や外来フォロー中心の症例に活用するのが効率的です。不足しやすい疾患群(代謝領域や内分泌領域など)を外来症例で埋める戦略も有効です。
病歴要約29編の提出要件は変わりましたか?
病歴要約29編の提出要件は旧制度から変更されていません。全て異なる疾患群から作成する必要があり、消化器領域では「消化管」「肝臓」「胆・膵」から提出することなどの細則も同じです。病歴要約の書き方はJ-OSLER病歴要約の書き方完全ガイドを参照してください。
よくある失敗3パターン
120症例制度で専攻医がはまりがちな失敗を3つ挙げます。
❶ 領域別最低症例数の存在を忘れて3年目に気づく
「総数120症例は余裕でクリアできた」と思っていたのに、代謝や腎臓など特定の領域で最低症例数を満たせていないことが判明するケースがあります。自由枠は実質20症例しかなく、旧制度のように得意な領域に偏らせることはできません。専攻医1年目の他科ローテーション開始時から、領域別の進捗を月1回確認する習慣が必須です。
❷ 7期生・8期生で旧制度(160症例)を安易に選択する
移行措置で160症例を選んだ場合、領域別最低症例数の縛りはなくなりますが、登録総数が40症例増えます。自分のローテーション環境で各領域の最低症例数を確保できるかを計算せずに「楽そうだから120症例」と選ぶと、後から制約に苦しむ可能性があります。選択前に必ず自施設のローテーション計画と照合しましょう。
❸ 初期研修症例の上限(60症例)を勘違いして計画を立てる
「初期研修の症例をたくさん流用できる」と考えて専攻医研修の計画を立てると、実際の上限(120症例中60症例)に気づいたときに計画が崩れることがあります。初期研修中の症例が使える割合は50%なので、残り60症例は専攻医研修中に経験する必要があります。1年目のローテーション期間に各領域で確実に症例を確保しましょう。
まとめ
2024年度以降の7期生から適用された120症例制度は、症例数が減った代わりに各領域の最低症例数が義務化され、より計画的な研修が求められるようになりました。自由枠は実質20症例しかないため、1年目のローテーション期間に不足領域を埋めることが最も重要な戦略です。COVID-19の特別措置が適用されない7期生以降は、修了要件を全て満たさないと試験を受験できないため、2年目末までに症例登録を完了させる前倒しのスケジュールを意識しましょう。
旧制度で160症例が求められていた時代の効率的な集め方は160症例を効率的に終わらせる方法にまとめています。7期生・8期生向けの変更点の詳細はJ-OSLER 7期生・8期生向け 120症例への変更点と対策で解説しています。症例登録の入力を効率化するテンプレートは症例登録テンプレートを活用してください。120症例×56疾患群の達成状況を効率的に管理したい方は、iworのダッシュボードが便利です。領域ごとの最低症例数の充足状況を自動集計し、不足している疾患群がひと目でわかります。症例登録と並行して進める病歴要約の書き方は病歴要約の書き方完全ガイドを、総合考察で差がつくポイントは総合考察の書き方を参照してください。修了要件の全体像と合わせて、計画的にJ-OSLERを進めていきましょう。進捗が遅れて焦っている方はJ-OSLERが間に合わない時の巻き返し戦略も参考にしてください。